2015年2月、山下智久さん主演のTBSドラマ「アルジャーノンに花束を」に、私のところから5人のキャストが出演することになって、撮影に臨みました。


●最重度と言われる知的障害者がドラマで演技をする

冒頭のシーンです。
障害者が働く作業所。
アップでカメラが1人の作業員に寄ったところからスタートします。
作業員は、機械の蓋を閉じてネジを締める。10秒ほどその様子をとらえてから、カメラがパンするとメインキャストにピントが切り替わる。というシーンでした。
ドラマディレクターの方は撮影当日、キャスティングされた5人のうちの1人、最重度と言われる知的障害があり、ダウン症の石井貴浩を指して、彼にその演技ができるか?と私に尋ねました。


●2つの条件

それは、貴浩が最も障害者に見えたからに他なりません。

私は即座に2つの条件をディレクターに提示しました。
2つの条件を了承していただけたら(貴浩はその演技が)「できる」と答えました。

①「機械の蓋を閉じてネジを締める」のではなく、「ネジを緩めた状態から、ネジを外して、蓋をはずす」という逆の手順でもいいか。
②カメラに見切れない位置から貴浩にきっかけの指示を出していいか。

ディレクターはそれを受け入れてくれて、貴浩のアップからのシーンが生まれました。


●なぜ「できる」と判断できたか

2008年9月から、アヴニールの前身となる団体で、私はレッスンを運営していました。
貴浩は、立ち上げ当初から一緒で、このドラマ撮影の時点で既に6年半。キャストの現場が重なった時を除いて、必ず私はレッスンに立ち会って貴浩たちを見てきました。

貴浩のスイッチ、というか、貴浩がどんなところに拘って、どのように理解するかが私には分かりました。
レッスンを一緒にやってきたことで生まれたシーンだと感じます。



貴浩とは長いですね…
2023年の今年。

貴浩が30歳、私が50歳になりました。
2人とも年齢よりは若く見えるでしょ 笑
貴浩との13年間